ネットフリックスで配信されていた鬼武者を観たので感想をまとめます。
ちなみにネタバレ注意です。
まず、視聴しながら「七人の侍」って映画を思い出しました。あれの系譜なのかなと。
侍たちが依頼を受けて行動するっていう流れとか、あと登場人物がけっこうあっさり死ぬ展開とかが特にそれっぽく感じました。「こいつが死んでしまうのか……」みたいな絶望、とまではいかなくても意外性があって。
一番それを感じたのが「海全」っていう僧のキャラクターが死んだときなんですけど、そのキャラ、「鬼の小手を持ち帰る」という使命があったのにそれを果たせずに退場するんですよね。
「なんだかんだで最期まで生き残って寺まで戻るんだろうな……」みたいに想像しながら観てたので、まさかあんな道半ばで倒れると思ってなかった。
で、このキャラが死んだときの最期の言葉もすごい味があって、仲間の一人である「さよ」っていう女の子に対して、作ってくれたご飯の感想を伝えて息を引き取るんですよ。
「運昇(うんしょう)様には秘密だがな、お前の料理は寺よりずっとうまかったぞ」
「ほんとうに、うまかった……」で亡くなるんですよね。
この場面はものすごい印象に残った。
なんか妙に身近な場面に遭遇しているような気がして。
でも、考えてみたらこの辺は日本人に独特の感性によるところが大きいかもしれないです。
例えば、日本の時代劇かなにかで侍の主人公がでかいおにぎりをムシャムシャ食べて「うむ」と満足げに腹をさする姿とかは想像しやすいけど、ヨーロッパが舞台の作品とか、アメリカの映画とかで、こういう、食べ物に対してしみじみと「うまかった……」って述懐する場面ってあんまり見ないじゃないですか。
日本には四季があって、海の幸も山の幸もあって、食環境に関してはたぶんかなり恵まれてる方でしょう。だから食べ物への感謝みたいなマインドが根付いてて、それが刺激されたからこの場面が印象に残ったんじゃないかと思います。そこに加えて「仲間との死別」、「貴重な戦力の消失」といった要素も重くのしかかってきたので、この場面が個人的に鬼武者ってアニメの中で一番のめり込んだ瞬間になった気がします。
あと印象に残ったのは、第五話での伊右衛門のセリフ。
「火は良い。
常に揺れ動き、留まるところを知らず、
何者をも寄せ付けない」
このセリフはすごいと思った。
いわゆる「孤高の天才」みたいなのを想起させる表現を、火というものに例えて語らせて、そのキャラの特性を描写するって手法になるんですかね。
このセリフを聞いただけで伊右衛門というキャラクターが何を理想としているのかが感じ取れるし自己紹介も一瞬で終わる。しかも言葉が短い分、利き手の想像力が刺激されてさらにそのキャラクターの奥行きが増す気がする。
ここはリアルで「うおぉ……」って声出ましたね笑
あんな短い時間で登場人物の本質を理解させられるとなんか気持ちよくなりますね。